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2009.05/12 [Tue]19:36
「東亰異聞」
小野不由美「東亰異聞」 新潮文庫
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読む気はあったはずなのに、どうしてか途中で止まっていた本。
三分の一は読んでいたが、改めて最初から読んだ。
首都・東亰。東京ではない。明治時代で、文明開化も進んだころ。
けれど、東京ではなく東亰。この小さな違いが大きな違い。ファンタジーなのだ。
その東亰のあちらこちらで小さな事件(と言っても人命が失われているのだが)が起きる。
犯人は同じだったり、違っていたり。共通するのは、普通の人間ではないらしいこと。
火炎魔人、闇御前、人魂売り、読売り、蕎麦屋などなど…
それらの事件に興味を持ち、調べ始る記者とそれを手伝う香具師を管理する男。
二人は事件で助かったという青年を訪ねるが、その青年は華族の跡継ぎと目される人であった。
鷹司家の次男であり華族に相応しい気質の常、長男ではあるが性格的に華族には合わない直。
鷹司家のお家騒動が事件の根幹であることがわかるのだが、いやはや。
直と常はどちらも互いを思いあう優しい人たちなのだ。
どれだけ周りが二人のどちらが相続するかで諍いをおこそうと、二人は自分より相手を思いやる優しい人たちなのである。
けれど、行き過ぎた優しさは歪んでいて、鷹司家の相続にこだわりすぎて、無関係な人を巻き込み自分を犠牲にするという切ないけれどよくない方向の優しさだった。
しかし、これで終わらない。
鷹司家のお家騒動にまつわる事件を記者が相棒を連れて調べ推理するというミステリーの中には、論理に収まらない事件、つまり妖怪変化も本当に含まれていたのだ。
でも…と思う。妖怪変化らの導く結末よりも、ずっと怖いのはやはり人間の心なのだ。
鷹司家のお家騒動は亡くなった鷹司の正妻・初子(直と常は妾の子)の計画的な恨みによるものだったのだ。
直と常は完全に初子の掌の上で踊らされていた。
あぁ、女は強い。そして、怖い。
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